虫歯、歯周病に続き、第三の口腔疾患として注目されている疾患がこの酸蝕歯(酸蝕症)です。では、この病気とは、一体どのようなものなのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
酸蝕歯とはそもそもどのような病気??
酸蝕歯(さんしょくし)とは聞きなれない言葉ですね。簡単に言うと歯が溶ける病気です。歯が溶ける(歯が蝕む)と言えば真っ先に思いつくのが虫歯ですが、これは原因が「細菌」によるものです。一方、酸蝕歯は「酸」によって歯の表面のエナメル質という硬く覆われた部分が軟らかくなり(軟化)、すり減って薄くなった状態のことを言います。普段の生活習慣が原因となることから生活習慣病とも言えるでしょう。一度すり減ったエナメル質は元に戻りません。
酸蝕歯は酸の強い食べ物を多く食べることで口の中が酸性に傾き、化学反応により、歯が溶けていく病気
歯というものは、脱灰と再石灰化を繰り返すが、酸蝕症がこれを狂わせる
歯というものは「溶ける→再生」を繰り返しています。歯のエナメル質・象牙質からリン酸カルシウムが溶け出す現象を「脱灰」といい、唾液がそれを修復する現象を「再石灰化」といいます。しかし、酸蝕症は脱会を進行させ、再石灰化が追いつかなくなり歯が溶け出してしますのです。
酸蝕歯の参考写真。末期になるとここまで歯が溶けてしまう
歯、全体が溶けてしまうことも。
ライトなどで照らすと歯が薄くなっているのがわかります。気になる方はライトで自分の歯を照らしてみてください。
酸蝕歯の代表的な症状はどのようなものなのでしょうか?
虫歯かなと思ったら酸蝕歯だったということもあります。下記のような症状がないかチェックしてみてください。
- 歯がしみる(知覚過敏や虫歯のような痛みが出ることがあります。)
- 黄ばんでいる
- 歯が細くなる、短くなる
- 歯がすり減る、平らになる
- 歯が薄くなる
- 歯に艶がなくなる
- 歯茎の境目や歯と歯の間が茶色くなる
- きちんと歯磨きをしているのに虫歯になる
- 詰め物が変色したり、取れやすくなる
上記のような症状に複数覚えがある場合は酸蝕歯、酸蝕症の可能性があります。初期の段階では気づかなかったり、虫歯と区別がつきにくいため、早めに歯科医に相談しましょう。
では、この酸蝕歯どのような原因でなることが多いのでしょうか。アナタも知らない内に酸蝕歯になる原因を作っているかもしれません。
酸蝕歯の原因はどのようなもの??
かつてはメッキ工場などで蒸発する酸を労働者が吸引することによって発症していた病気ですが
いまではほとんどありません。その代りに、健康ブーム、美容ブーム、酸の多い現代の食生活よって
多くの人が酸のリスクにさらされています。
原因①食べ物や飲み物によるもの
私たちが毎日摂取しているものの中で、おいしく感じるものは酸性の食べ物が多く、市販の飲料の約70%は酸性の飲み物と言われています。毎日の食事が大切な歯を溶かす原因になっているとはショックですね。
<酸性の強い食品>
- 炭酸飲料やスポーツドリンク
- 柑橘系の果物(オレンジ、レモン、グレープフルーツ、キウイフルーツなど)
- フルーツジュースや野菜ジュース
- 梅干しや酢(酢の物や黒酢ドリンク、ポン酢など)
- クエン酸やビタミンCなどのサプリメント(液体、顆粒)
- マヨネーズ、ドレッシング
- ワイン、ビール、酎ハイ
- 栄養ドリンク
- ハーブティー
子どもが好む炭酸飲料やスポーツドリンクには酸のほかに砂糖も大量に含まれていますので虫歯と酸蝕歯が併発することもあります。何気なく口にしているものが歯にとって良いものか悪いものかを気にすることで予防につながります。
このほかにも酸性の強い洗口液や歯磨き粉などにも注意が必要です。
PH5.5以下のものから歯が溶け出します。
原因②病気によるもの
- 逆流性食道炎
- 拒食症や摂食障害やつわりで嘔吐を繰り返す
- げっぷによる胃酸の逆流
原因③習慣によるもの
- 歯ぎしり、食いしばり
- 就寝前の飲食
- 無理なブラッシング
酸蝕歯や酸蝕症は普段からの習慣や食生活が大きく関わっています。特に食べ物に関しては注意が必要です。
ワインをテイスティングするソムリエや塩素消毒が行われているプールで長時間泳ぐ水泳選手などは職業上、酸蝕歯になりやすいとされています。しかし、こうした特殊な職業の方だけではなく現在は多くの酸性の清涼飲料水が出回り老若男女問わず酸蝕歯になる可能性を秘めています。
では、具体的に酸蝕歯、酸蝕症の治療方法をみていきましょう。
酸蝕歯の治療や予防法
まずは予防が第一です。もし、すり減ってしまった場合にはその原因をしっかり突き止め、対処していくことが大切です。そのあとで自分に合った治療法を探すのが良いでしょう。
酸蝕歯の治療法
歯を削らずにレジンで修復
比較的初期の場合は削らずに治すことができます。すり減った部分に歯科用接着剤でレジン(歯科用プラスチック)を盛り修復する方法です。自分の歯に近い色を再現できます。
歯を削りセラミックなどで修復
症状が進んでしまった後期の場合は歯を一回り小さく削らなくてはかぶせることができません。そのため神経が近い場合は麻酔をしたり、先に神経の治療が必要になることもあります。金属製やセラミック、ジルコニアなどがあります。自然な歯に近いものは自由診療になるので高額になってしまいます。
一度削ってしまった歯が元に戻らないのと同様に、一度酸蝕歯となって溶けた歯は元にはもどらない。
酸蝕歯の予防法
①酸性の飲食物を口にしたら、お茶や水で口の中を中性に戻す。
酸性の食品を摂取したら、水を飲んで口の中を中和します。口の中に酸性のものを貯めこまないために、ストローを使用するもの効果的。また、摂取直後の歯磨きは控え、食後30分から1時間後に磨きます。口の中は食べた直後は酸性で、唾液によって徐々に中和されていきます。なるべく酸性の状態を減らし、だらだら食べたりせず、きちんと食事の時間を決めることも大切です。
②原因となっている習慣をやめるか減らす
寝る前に食べたり飲んだりする習慣をやめ、歯ブラシは軟らかめからふつうのもので優しく丁寧に磨きます。歯ぎしりがある場合はストレスをためず、ゆったり過ごすようにしましょう。必要があれば歯ぎしり防止用マウスピースを使うのもよいでしょう。
酸蝕歯を予防するオススメ歯磨き粉3つ(広告なし)
歯磨き粉を選ぶときは研磨剤(歯の表面を削り取ってしまいます)の入っていないものを選ぶのがいいでしょう。
シュミテクトproエナメル®デイリーエナメルケア
ブラッシングの度に歯の表面のエナメル質をケアする独自のエナメルプロテクション処方口腔内のpHを適正に保ちながらエナメル質を強化して、‘酸’によるダメージから歯のエナメル質を守り、フッ素がエナメル質を強化して虫歯を予防
メルサージュ・クリアジェル
フッ素による脱灰(酸によってエナメル質が溶けること)を防ぐ効果があります。
アパガードリナメル
ナノ粒子配合ハイドロキシアパタイトが歯の表面についた細かい傷を修復し、ミネラルをたっぷり補給することでつやつやで滑らかな表面をつくります。ステインやプラークが付きにくくなります。
酸蝕歯・酸蝕症 まとめ
- 酸蝕歯はエナメル質がすり減る病気
- 普段の生活習慣が原因
- 症状が軽ければレジンで治療することができる
- 生活習慣を変えることで予防ができ、進行も止めることができる
いかがでしたか?
日本人の6人に1人が酸蝕歯の時代。病気のことをしっかり知って、予防することが大切です。何気なく食べている毎日の食生活を見直し、生活習慣を見直し一生健康な歯で暮らしましょう。