そもそも脱灰って何?
唾液を乾燥させて歯を観察してみると、歯の表面が光沢感のない白く濁ったような色合いになっていることはありませんか?この白く濁った歯のことを「白濁」といい、歯の表面エナメル質が脱灰を起こした状態です。食事や間食を摂ったときに、虫歯菌(ミュータンスレンサ球菌)がその糖質を基質にして酸を産生していきます。この酸が 歯を溶かし、脱灰を進めていきます。この脱灰がすすむと、初期虫歯になりゆくゆくは歯の表面に穴の開く虫歯へと進行していきます。
なぜ人は虫歯になる??
もともと人の口内には生まれた時から虫歯菌が存在するわけではありません。19〜31ヶ月の乳幼児期に、母親や父親の唾液を介して虫歯菌に感染します。この時期に虫歯菌に感染していなければカリエスリスクは低くなり、虫歯ができないお口の環境になるのです。
虫歯菌がお口に存在している人は、デンタルプラーク中の細菌が糖質を基質として歯の表面を脱灰し、さらに溶解させて虫歯を作っていきます。
感染病である虫歯は、
- 虫歯菌に感染していないか
- 虫歯菌が育ちやすい環境にお口の中がなっていないか
- 脱灰が起こりやすい歯の質ではないか
の3つの要因で虫歯ができるかどうかが決まってきます。(これをKeyesの3つの輪「宿主と歯」「口腔内細菌叢」「食餌基質」と言います)
脱灰と再石灰化の関係性について簡単にわかりやすく教えて
石灰化とは
虫歯菌(ミュータンスレンサ球菌)が糖質を元に酸を産生し、歯の表面を脱灰していくことで虫歯になります。しかし、虫歯初期の脱灰は一方的に進行するものではありません。唾液などの働きによって、歯から溶出していたカルシウムイオンやリン酸イオンが再び歯に取り込まれてもとの脱灰される前の状態に戻ります。この現象を歯の再石灰化といいます。
脱灰と再石灰化の関係
エナメル質表層は日常的に脱灰と再石灰化を繰り返して均衡を保っています。しかし、糖質の摂取量、食事や間食の頻度や時間、そしてお口の中の清掃状態により脱灰と再石灰化のバランスが崩れてしまいます。成熟したバイオフィルム(固体表面に付着した細菌がコロニー状に凝集し、自らが産生した多糖体と粘着性の膜状複合体を形成したもの)に覆われる時間が長くなると、このバランスが脱灰に傾き、やがては歯質の実質欠損を伴う虫歯へと進行していきます。虫歯初期の段階であれば日頃のセルフケアで歯の再石灰化を促進して、元の状態に回復させることもできます。ただし、虫歯で歯に穴があいてしまった場合元に戻せませんので、早い段階から取り入れていくことをお勧めします。
フッ素は再石灰化を促進する
普段使用している歯磨き剤に含まれる「フッ素」の成分はこの再石灰化を促進してくれる成分になります。フッ素入り歯磨き剤の他には、「MIペースト」と呼ばれる歯磨き仕上げ用ペーストも効果的です。CPP-ACP(リカルデント)配合で、歯の再石灰化に有効なACP(非結晶性リン酸カルシウム)が含まれています。
脱灰を防ぐために自分たちや歯科医院でできる事は?
自宅でできること
<歯磨き>
脱灰を起こす元である「バイオフィルム」が長時間歯の表面に存在するとそれだけ脱灰が進んでしまいます。歯磨きをしてバイオフィルムを取り除くことが脱灰の予防になります。「バイオフィルム」は機械的清掃でしか取り除くことができませんので、きちんと歯ブラシや歯間ブラシ、フロスを使用した歯磨きを行ってください。マウスウォッシュやウォーターピックではバイオフィルムを除去することはできませんので注意してください。
<食事>
食事の取り方や何を多くとるかで脱灰が進みやすくなるかどうかも決まってきます。お口の中は唾液の緩衝作用により「中性」に保たれていますが、飲食をすることにより一時的にお口の中が「酸性」に傾きます。この酸性に傾いている時、歯の表面エナメル質の脱灰が行われます(この時のpHを臨界pHと言います)。約60分程度で元の中性に戻っていくのですが、「ダラダラと食事を続けている」「何度も間食を取ってしまう」「甘い飲み物が好きでよく飲む」人の場合、お口の中は酸性に傾く時間が長くなり脱灰され続けます。
- ダラダラと食事を取らない
- 何度も飲食をしない
このことが脱灰を食事で防ぐ方法になります。
<リカルデント配合のガム>
また、歯の再石灰化を促すものとしてガム(リカルデント配合)もオススメです。キシリトール配合のものも歯に良いものですが、こちらは代用甘味料で「虫歯菌の餌となる糖類が含まれていない」=「歯に良い」とされるもののため、歯の再石灰化の効果はありません。
歯科医院でできること
バイオフィルムを取り除くために、
PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)
という歯の清掃を受けることで脱灰を防ぐことができます。また、PMTCではフッ素配合のペーストを使用して歯の表面をツルツルに仕上げてくれるので、PMTCを受けることはバイオフィルムの除去だけでなく、バイオフィルムが付着しにくい歯の表面に仕上げてくれます。また、「フッ素塗布」を受けることで、歯の再石灰化も促進されます。歯科医院で取り扱うフッ素は日用品のフッ素配合歯磨剤よりも濃度の高いものを使用できます。
脱灰について まとめ
最後に、脱灰について重要な点をおさらいしておきましょう。
<脱灰とは>
虫歯菌が糖質を基準にし酸を作り、それが歯を溶かしている状態
<再石灰化とは>
反対に、唾液などによって歯から溶出していたカルシウムやリン酸イオンが再び歯に取り込まれること。
<自宅でできる歯を丈夫にする取り組み>
ダラダラと食事を取ったり、何度も食事をしない。きちんと歯ブラシや歯間ブラシなどを使った歯磨きを行う。
<歯科医院で行う歯の清掃>
PMTCで、フッ素配合のペーストを使用して歯を綺麗にしてもらえる。バイオフィルムを除去し、付着しにくい表面に仕上げてもらえます。
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