味覚障害の原因はどのようなことが考えられる??
1、加齢
味覚障害は、年齢を重ねることによって緩やかに進行してゆくことが知られています。そもそも人間に限らず、地球に存在する多くの生物は加齢によってあらゆる機能が低下してゆく傾向にあるのは皆さんご存知のとおり。「加齢によって味覚障害が発症してしまう!」といった極端な表現よりも、「加齢によって緩やかに味覚に変化が生じてしまう。」と言った方が正しさに近いかもしれません。
味蕾の数が少なくなってしまう
人が『味』を感じる際、まず始めのきっかけとなるのは、”味物質(食物)が舌の味蕾(味細胞)に接触する。” とされています。食事を美味しく楽しむ。つまり、味覚を十分に感じ取るためには、この『味蕾(ミライ)』の数が十分量確保されていることが1つの条件となります。逆に、『味蕾』が少なくなってしまうと、食物の味を十分に感じることが出来ないと言うことが出来ます。髪の毛が薄くなってしまうことや歯が少なくなってしまうことと同様に、齢を重ねることによって『味蕾』の数が減ってしまうことが、加齢による味覚障害の正体と考えることができるという訳ですね。
2、ストレス
過度のストレスやうつ病などの心理面での疾患が、味覚障害を引き起こしてしまうケースが存在します。このメカニズムを細かくご説明すると、以下のような流れとなります。
- ストレスや睡眠不足などが原因でメンタルに不調が生じる
- 多かれ少なかれ『自律神経』のバランスに乱れが生じてしまう。
- 自律神経と大きな関わりを持つ『唾液腺(唾液を作り出す器官)』の活動に乱れが生じる。
- 唾液の分泌が減少してしまい、口腔内が乾燥した状態に保たれる。(=口腔乾燥症状が生じる。)
- 味物質(食物)がスムーズに味蕾に流れ込まず、味覚を十分に感じ取れなくなる!(=味覚障害が生じてしまう!)
口腔乾燥症について
上記の中で出てきた、『口腔乾燥症』というものは、味覚障害を語る上で非常に重要なキーワードとなります。口腔内が極度に乾燥してしまうと、味を感じるための『味蕾』と味物質が上手く結合することがなく、そのまま口の奥に追いやられてしまうために『味覚障害』が生じてしまうという訳です。
口の中が普段よりも乾燥してしまう『口腔乾燥症』は、これからの内容でも繰り返し触れてゆくことになりますので、しっかりと覚えておきましょう!
関連記事:口腔乾燥症って何?唾液現象の障害と、原因から導く4つの治療法。
3、薬の作用
服用している薬剤の副作用として、味覚障害が生じてしまうケースが存在します!以下に、味覚障害が ”副作用として出易い” 薬剤について簡単にご説明します!
抗うつ薬
うつ病の治療などに使用される『抗うつ薬』は、神経のに作用するタイプのものがほとんどです。先程も少し触れたように、唾液の量や質は自律神経の働きに大きく作用されることが知られています。神経の働きに影響を与える抗うつ薬の服用した場合、副作用が強く出てしまい、唾液が過度に減少してしまう。つまり、『口腔乾燥症』が程度の差はあれど生じてしまうケースが知られています。口の中が乾燥してしまい、その結果味覚に障害(変化)が生じてしまうというワケですね!
4、亜鉛不足
味覚障害を引き起こしてしまう原因として『亜鉛不足』というものが存在します。理科の実験などで誰でも一度は聞いたことのあるだろう『亜鉛』という物質。実は、鉄分と並んで人間の健康にとても重要な物質でもあるのです!『亜鉛の不足』による味覚障害は、以下の流れで生じるとまとめることが出来ます。
- 亜鉛が不足する。
- 味細胞の分裂(生産)が効率よく行なわれなくなる。
- 味細胞のバランスが崩れて、味覚に障害(変化)が生じてしまう!
亜鉛が体に必要な理由
亜鉛は私たちの体を構成している ”細胞” が分裂する際に非常に重要な役割をになうことが知られています。つまり、亜鉛が極端に不足してしまうと、細胞の分裂が鈍ってしまうというワケです。
味覚を感じるための細胞である、『味細胞』は、その他の細胞と比べて比較的細胞の ”ターンオーバー” が早いことが分かっています。「ターンオーバーってなに?」という声が聞こえてきそうですが、「細胞のターンオーバーが早い」とは「細胞が比較的早くに入れ替わってゆく」と言い換えることができます。つまり、味細胞は寿命の短い細胞であると言えるのです!
細胞の寿命が短いということは、無くなってしまった細胞を補うために絶えず新しい細胞をつくり続けてゆく必要があります。先程、「細胞の分裂には亜鉛が重要な役割をになう。」と説明しましたが、その亜鉛が極端に不足してしまうと、ターンオーバーの早い細胞達の ”生産” が追いつかずに、結果的にその量や質が低下してしまうこととなるのです!
5、全身的な身体の病気
味覚障害は、その他の全心疾患の一症状として表れるケースがあります。味覚障害がみられることのある代表的な病気としては、以下のようなものが広く知られています!
- シェーグレン症候群
- 糖尿病
- 肝障害
- 消化器系疾患
これらの全身的な疾患でみられる味覚障害は、その細かな原因がそれぞれで異なります。かなり専門的な話になってしまうため、ここでは解説を省略しますが、上記の疾患をお持ちの方で味覚障害が気になる方は、是非ともそのメカニズムについて担当医から情報を得て、自分の疾患と上手につき合うようための知識を増やしてみましょう!
6、風邪
風邪を引いたときに、一時的ではありますが軽度の味覚障害が確認されるケースがあります。このタイプの味覚障害は、舌や味蕾(味細胞がつまった部分)そのものに何か異常がある訳ではないことが知られています。
香りを感じられなくなる
人が「味」を認識するとき、食品が持つ味”成分”と同じくらい影響力があるのが『香り』なのです。よく「食事は香りを楽しむものだ。」といった言葉を聞きますが、人間は「味”成分”+香り」を合わせて感じることにより、食品それぞれの『味(風味)』を感じ取っているのです!
先程、風邪では舌に大きな変化は生じないと言いましたが、風邪による味覚障害では、『香り』を上手く感じ取れなくなることが大きな原因になります。味成分を感じ取ることに異常は生じないのですが、鼻づまり等の風邪症状が香りに対する感受性を低めてしまい、結果的に「食事の味を感じづらくなった。。」といった味覚障害を引き起こしてしまうのです。
7、脳の障害
比較的稀なケースとも言えますが、『脳の障害』によっても味覚障害が生じることが考えられています。味に限らず、人の感覚全ては身体に無数に存在する神経を伝わります。細かな神経から大きな神経まで、それらを通過した感覚というある種の ”情報” は、その多くが最終的には脳によって整理整頓されることとなります。
脳に障害が生じてしまうと、程度の差はあれど人間の持つ感覚のどこかに変化が生じてしまいます。この理由は、様々な感覚を ”整理する” 脳の機能に異常が生じるから、と説明することができます!
原因不明の味覚障害もある!?
かなり稀なケースでありますが、その原因がはっきりと分かっていないタイプの味覚障害も存在します。
これらの味覚障害では「味が無いものなのになぜか味を感じてしまう!」「これまで甘いと感じていたものを辛いと感じるようになった!」など、その症状が極端に出てしまう傾向があります。比較的一般的な味覚障害であるものとは、症状の出方も程度も大きく異なりますので、気になる場合はすぐに医療機関を受診するようにしましょう!
症状が極端な味覚障害は、先程触れた『脳障害』とも関連性が深いことが知られていますので、まずは、原因究明のために適切な機関にてしっかりとした検査を受けることが必要となります。
味覚障害の原因について まとめ
最後に味覚障害の原因について重要な点をおさらいしておきましょう。
- 加齢
- ストレス
- 薬の作用
- 亜鉛不足
- 全身的な身体の病気
- 風邪
- 脳の障害
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